Regional
Development
Studies
追手門学院大学地域創造学部ウェブサイト
岩渕 亜希子
-Iwabuchi Akiko-
地域創造学部
政策コース担当教員
地域のハブとなる居場所を学生と共に作る
―― 先生の研究についてお聞かせください
私は「家族社会学」という分野の研究をしています。社会学という学問は、社会にかかわることならなんでも扱いますが、家族社会学では、人生にかかわる結婚や子育て、未婚化・晩婚化などの社会現象、歴史的な家族の変化、家族を支える制度や価値観など、家族にかんする多様なトピックを扱います。
―― 先生のゼミの中心的活動である「認知症カフェ
(ふらっとカフェ追大)について教えてください。
2015年に地域創造学部に移籍したことをきっかけに、地域における生活の継続や介護について研究し「福祉のまちづくり」を考える中で「認知症カフェ」にたどり着きました。
総持寺キャンパス周辺は高齢化率が高く公共施設が少ないことから、大学に認知症カフェを作ることで、地元の人と関われる場所を作り、ゆくゆくはこの地域のハブ・拠点となる場所となればよいなと考えました。
――どのような形でスタートしたのですか?
足掛け2年かけて市内の認知症カフェを回ったり、全国の認知症カフェについて調べたりした上で、2020年度から、草山先生との合同ゼミでカフェを開始しようと準備をしていました。しかし、covid19の感染拡大が始まり、緊急事態宣言も出て、大学のすべての授業もオンラインとなり、ようやく開催できたのはこの年の11月になってからでした。その後も繰り返す感染拡大で思うように活動が出来ず、立ち上げに参加した学生は極僅かな活動しかできなかったため残念であると話していました。しかし、未知の感染症の流行という問題がある中で、認知症カフェを開催する基本の形をつくってくれたことについて、この初代の学生たちにはとても感謝しています。
上図:いつかのカフェの様子
――今後の展望については
現在ふらっとカフェ追大は3年目に入りました。どんどん環境も変わりますし、まだまだ課題がたくさんありますが、細々と続けてきたことで生まれた出会いがたくさんあります。それを一過性のものにせず、地域に新しい出会いや活動の種がまかれていくような、関わる一人ひとりの「得意」や「好き」が活かされていくようなカフェを目指してこれからも活動していきたいと思います。
―― 卒業制作、論文はどのようなものを
作ることができますか
基本的には学生さんが、やりたいこと・経験したいことをしてもらっています。
人数が多くなった時は、各々違う研究をするとなると指導が行き届かなくなるので、やりたいことを下地に共通の関心がある人とチームを組むことを提案しています。
また内容は何でもOKなんですけど、学生が私の専門外の研究を希望するときは「私の専門分野のようには指導できないけど、いい?」と聞いています。
認知症カフェや高齢者福祉の分野に興味があると嬉しいですが、「必ずしもカフェ」というわけではないですよ。
――内容はどのようなものになっていますか?
今は主に来年度のカフェ運営を進めるチームや、イベント運営を卒業制作に生かすチーム、またフードパントリーやシングルマザー等の福祉分野に焦点を当てて研究するチームなど多種多様です。またピンで活動している人もいて、ゼミ外で活動しているプロジェクトをそのまま卒業研究にする人や、地域交通というテーマで論文を書こうとしている人もいます。
上図:昨年・一昨年度開催の
「焼き芋会」の様子
―― 今年度の卒業制作について教えてください
「ふらっとカフェ・認知症カフェ」に関する研究や制作をした学生が半数いました。
ふらっとカフェの立ち上げから参加した学生さんの一人は、立ち上げから現在までの記録をまとめました。参加者・来てくれたゲストにインタビューを行い、カフェの写真などを使いながら若い人でも見てもらえるようデジタル冊子を制作しました。結果として他ゼミ生さんが記事を読み、関心を持って、ゼミの研究の一部にカフェのことを取り上げてくれるようになるなど、学生さんに広がり繋がっている点はよかったです。
また広報に興味がある学生さんは、ふらっとカフェのチラシなどをずっと制作してきてくれたのですが、そこで得た自分なりのノウハウなどをまとめ、地域活動をする人たちの広報活動に役立つよう冊子にしました。
認知症カフェ関連だと、茨木市内に20か所以上ある認知症カフェに取材に行き、カフェが気になっているけど参加を躊躇する人たちに認知症カフェの雰囲気を伝えるために、コロナ禍の開催状況や活動理念、活動内容などを紹介する雑誌を作った学生さん、無縁社会が広がっている中で、それを解消する可能性がある事例を3つ(フードパントリーと認知症カフェ、シニアディスコ)挙げ、無縁社会克服につながる地域活動について考察し、論文としてまとめた学生さんがいます。
――他の学生さんはどのような研究をしていますか
吹田市在住の人は吹田の魅力って何だろう?と考えたとき、「緑が豊か」「公園が充実している」ことを発見し、“緑”と“町”の関係を写真集として表現する学生がいました。
また医療支援制度の地域間格差について、全国の様々な市町村を選び比較を行って論文を書く学生さんや、「場面緘黙(かんもく)症」という自身の症状に基づいて、この障害を持つ人が置かれた現状と今後の課題について調べて論文にまとめた学生さんもいました。
―― 卒業後、ゼミ生にはどのような人物に
なってほしいのか
基本的には「自分を幸せにできてほしい」ですね。
自分がどうやったら幸せになるかを知っていて、そこまで行くのに自分で工夫が出来る人。最初からいろんな条件が揃っていたり、何もかも満たされて生きている人はそんなにいなくて、望まない働き方であったり、ストレスであったりと付き合いながら生きていかないといけない。そのなかで、自分で自分の機嫌を取れる人は強いです。皆には、世の中や自分自身とつきあう自分なりのノウハウを持つ人になってほしいです。
その上で、自分以外の人にも目を向けて、社会がより良い場所になるために、小さなことでも行動できる人になれば言うことないですね。