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岡田美奈子

​-Okada Minako-
​地域創造学部
観光コース担当教員

―― はじめに、先生が研究している分野について教えて下さい。

サステナブルツーリズム、持続可能な観光地域づくり、地域の人々の幸福度を高める観光について研究しています。
サステナブルツーリズム(持続可能な観光)とは、「訪問客、業界、環境および訪問客を受け入れるコミュニティーのニーズに対応しつつ、現在および将来の経済、社会、環境への影響を十分に考慮する観光」と定義されています。つまり、地域の自然環境や文化を守りながら、持続可能な社会や経済発展など地域内の好循環をもたらす、よりよい地域づくりに貢献する観光、と考えるとよいでしょう。
これまでは、観光客視点での観光推進が中心でしたが、環境・文化保護、地域経済の活性化、そして地域社会との調和など、地域の持続可能性につながる観光推進がスタンダードになるように地域への支援や人材育成に尽力したいと考えています。

私が観光の仕事をするようになった当時は、日本人の海外旅行が隆盛の時代でしたので、日本人の海外旅行動向調査やマーケティング・プロモーションなどがメインの仕事でした。2012年以降、訪日外国人が徐々に増加しはじめ、我が国としてもインバウンドへの取り組みが強化されるようになり、訪日外国人動向調査や受入体制づくりなどの仕事が増えていきました。2016年前後からは訪日外国人の増加も一因となり、一部の地域で混雑やマナーなどのいわゆるオーバーツーリズムの課題も取り上げられるようになってきました。海外では、すでにオーバーツーリズムの課題に対応しうる「サステナブルツーリズム」への取り組みが進んでいたことから、海外の観光政策や事例などを調査し、その考え方や実践を日本でも広めていくために、国や地域とともにサステナブルツーリズムの推進に携わっていました。メディアで観光による環境や地域社会へのネガティブな影響や問題が取り上げられがちですが、観光を適切に管理することで、その多様なメリットが持続的に引き出され、よりよい社会や地域づくりの原動力としての力を発揮します。
今では「持続可能」や「サステナビリティ」という言葉をよく聞くようになりましたが、まだ言葉が先行している感じがします。地域での具体的な実践、となるとなかなか進んでいない難しいのが現状です。地域の特徴を基盤に、持続可能な地域づくりに貢献する観光のしくみづくりを地域の関係者と一緒に議論しながら構築していくことが大事です。

―― 「持続可能な観光」について学ぶ際のおすすめの入門書はありますか?

神奈川大学の島川崇先生が執筆された「観光につける薬: サスティナブル・ツ-リズム理論」や東京女子大学の藤稿亜矢子先生による「サステナブルツーリズム-地球の持続可能性の視点から-」という本がわかりやすくお薦めです。

―― 岡田先生のゼミの概要について教えて下さい。

2024年度の3年ゼミには約20人の学生がおり、男女比は半々です。
持続可能な地域づくりや地域の人々の幸福度を高める「観光」に注目し、サステナビリティ、持続可能な観光、ウェルビーイングをキーワードに研究を行っています。サステナブルツーリズム、レスポンシブルツーリズム、リジェネラティブツーリズムが中心のテーマです。
前期は、主にグループでの調査研究を実施し、後期は個人での研究活動へとシフトしていきます。地域の現状を正しく理解するために文献などを通して調査した上で、現地調査では、様々な方々へのヒアリングや地域活動にも積極的に参加するなど、好奇心をもち、真面目に取り組む学生が多いです。

―― いままでのFWではどのような活動をしてきましたか?

岐阜県の下呂市、高山市、飛騨市、白川村など温泉地や観光地として有名な地域のほか、伝統的なものづくりで若者にも人気の福井県鯖江市、エコツーリズムやコミュニティ主体の観光を推進する京都府美山町などで活動しています。下呂市では、日本三名泉の一つの下呂温泉へ多くの観光客が訪れる一方、自然や文化などの地域資源や食資源などが豊かな飛騨小坂町や馬瀬などの周辺地域へはあまり観光客が訪れていません。そうした周辺地域の知名度向上や周遊促進に向けて、観光客や住民にインタビューなどを行い、改善策などを検討します。高山市でも、ふるい街並みなど一部のエリアに観光客が集中する傾向があることから、調査を通して、観光客の分散に向けた取り組みなどを検討します。大阪周辺では、水都大阪エリアに若者が集まるしくみづくりを検討するなど、継続的に取り組んでいます。サステナブルツーリズムの一環で、MICEの調査や研究も行っています。今年は、国際的なMICE都市を目指す大阪のMICE振興を考えるために、大阪全体をMICE会場にみたてる調査研究活動も実施しました。
ゼミ活動では、社会課題の解決につながるような調査研究を基本にしており、自治体、DMOや地域づくりの関係者との協力や連携を大事にしながら、よりよい地域づくりのための観光を考えていきます。

―― 過去のゼミ生の卒論のテーマはどのようなものがありましたか?

・サステナブルツーリズムによる持続可能な観光地域づくり
・レスポンシブルツーリズム(責任ある観光)
・オーバーツーリズムを未然に防ぐための観光客の分散
・観光における高付加価値とは
など、サステナブルツーリズムを基軸としたものが多いです。

―― ゼミ生の就職先は今までどのような企業がありましたか?

今の3年ゼミ生が本学での初めての卒業生となります。インターンとして、都市ホテルや観光地の旅館で2週間前後の職場体験やMICE企業でMICEの現場や業務に携わっている学生もいます。観光関連の就職先として旅行会社や宿泊施設だけでなく、DMO(観光地域づくり法人)といった観光地域づくりに携わりたいという希望をもつ学生もいます。

―― ゼミの目指す姿やどのような学生にゼミに来てほしいかについて教えて下さい。

好奇心・チャレンジ精神、主体性、忍耐力と向上心のある学生です。社会生活における基本的なルールが守れることは必須です。
観光を通して、観光客、地域住民、そして観光や地域づくりの仕事を担う人々、みなが幸せになれるようなしくみづくりや連携を発展的に考え、地域や社会に貢献したいという意欲のある方にいらしていただきたいです。取り組みたい研究テーマにあわせて、よりよい研究が進められるようにバックアップしていきます。

―― 最後にこの記事を読む人へのメッセージをお願いします。

記事をご覧いただきありがとうございます。
2025年度は、「サステナブルツーリズム」「持続可能な観光地域経営」「観光行動論」「観光マーケティング論」などの講義を担当します。イギリスで学んできた「観光マーケティング&マネジメント」の内容も取り入れ、わかりやすく楽しい講義やゼミ活動を心がけています。
今回のインタビュー内容について、関心など持たれた方は、ぜひお声がけください! 
観光や地域づくりに関心のある方は、積極的に色々な地域に出かけて、現場でたくさんの経験を積んでください。よりよい地域づくりや様々な地域課題の解決に貢献しうる「よりよい観光」を一緒に考えていきましょう!

​教員についての詳しい経歴はこちらへ

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