Regional
Development
Studies
追手門学院大学地域創造学部ウェブサイト

石塚裕子
‐Ishizuka Yuko‐
地域創造学部 観光コース担当教員
小さな声の人に寄り添う
― Q1.どうして追手門学院大学を選ばれたのですか?
A. 追手門学院大学のWIL*と呼ばれる学修スタイルに共感したのでこの大学を選びました。特に行動を起こす中で学修を行うという点が、私のスタイルである「走りながら考える」という姿勢と重なり、惹かれました。
*WILとは … WIL(Work-Is-Learning)は主体的に学び、協働して問題解決にあたる追手門学院大学独自の学修スタイルです。行動(Work)を通じて学修(Learning)を行い、それを即実践に反映する経験を蓄積することで、予測困難な状況の中でも行動し、学び続ける力を養います。本学では授業や学内外で実施される様々な活動をWILプログラムとして登録、認定し学生の主体的な学びの場を提供しています。
(参考:追手門学院大学WIL推進センターHP https://www.otemon.ac.jp/education/support/wil.html)
― Q2.先生は何を研究されていますか?
A.元々は日常を対象にユニバーサルデザインのまちづくりを研究していましたが、現在は、非日常を対象に観光や災害時のまちづくりも研究しています。災害に関しては、特に災害が起きる前のまちづくりに取り組むことが多いです。東日本大震災が起こった際、被災地の避難所を訪れていく中で障害のある方が避難所にほとんどいないことに気づきました。それをきっかけに非日常に焦点を当て、主に障害者や高齢者など、困りごとを抱えやすい人について研究を行うようになりました。また現在の研究で意識していることは、インクルーシブリサーチと呼ばれる、当事者と一緒にまちづくりを考えることです。
― Q3.能登でのゼミ活動を計画されているとうかがいましたが、なぜ能登を選ばれたのですか?
A.急に選んだものではなく、これまでの研究活動でかかわった人からの紹介で能登での活動に興味を持ちました。まちづくりや災害復興は数年でできるものではなく、長い時間をかけて行うものです。だからこそ大学生として関われる限られた期間に、フィールドの一部に参加させてもらっているという自覚を持ってほしいと思います。フィールドに研究成果を還元することに加えて、そこで得た経験を別の機会や他の地域でも活かしてほしいと考えています。

―Q4.能登ではどのような活動を行おうと考えていますか?
A.能登では被災した地域での活動を行おうと考えています。現地の人たちの活動に伴走しながら、外部から関わる私たちに何ができるのか、どのように関わるべきなのか考えて活動していきたいと思っています。既に話題になっているのは、ロングトレイル**を活用した復興につながる交流のあり方を模索したいと思っています。
**ロングトレイルとは … 登頂を目的とする登山とは異なり、「歩く旅」を楽しむために整備された長距離自然歩道のことです。山道、里山、ときには町や歴史的な古道をつなぎ、数日から数ヶ月かけて自然や文化、その土地の暮らしを体感しながら歩くことができます。
(参考:日本ロングトレイル協会 https://longtrail.jp/syui.html)
―Q5.ゼミ生には今後どのような人になってほしいですか?
A.相手をリスペクトし、自分の考えを柔軟に見直すことのできる「修正力」を身につけてほしいと考えています。フィールドに行った際には相手の貴重な時間をいただいているという意識を持ち、相手の言葉だけでなく、その背景にある思いも感じ取ってほしいです。また、まちづくりには、一つの決まった正解があるわけではありません。相手との対話を通して、自分の考えを修正し、更新しながら、ともに成り立つ答えである「成解」をつくっていってほしいと思います。
― Q6.先生の研究のキーワードである「小さな声」について教えてください
A.「小さな声」とは、これまでまちづくりの場に参加しにくかった人や、困っていてもそのことを声に出しにくい人の声を意味します。これまでの地域コミュニティは、地域生活において社会的障壁を感じることなく多様な活動ができる「強い市民」を対象として行われていました。そのため小さな声である、いわば「弱い市民」の参加はあまり意識されていませんでした。これからのまちづくりには、小さな声を持つ人たちの意見も取り入れていくことが必要だと考えています。
― Q7.関西万博・大阪ヘルスケアパビリオン***にかかわられたと伺いましたが、どのようなことをされたのですか?
A.長年、ユニバーサルデザインのまちづくりを研究していたことから、博覧会協会から依頼されて、パビリオンのユニバーサルデザインの監修を行いました。ワークショップなどでさまざまな立場の人たちと一緒に話し合いながら、パビリオンの設計などを検討しました。たとえば、パビリオンの中のトイレについては、障害のある方たちや性的少数者の方たちと一緒に考えていきました。一人ひとりが望むトイレの形はさまざまで、ニーズが相反することもあります。しかし、お互いの意見を聞き合い、理解することで当事者自らが「成解」をつくっていったプロセスがとても印象に残っています。
***関西万博・大阪ヘルスケアパビリオンとは … 2025年の大阪・関西万博でのパビリオンの一つでした。地元大阪がREBORNをテーマに、未来のヘルスケアや都市生活を体験できる展示を行っていました。特に、2050年の未来の自分の姿を見ることができる展示が話題になりました。(参考:EXPO2025 大阪ヘルスケアパビリオンNest for Reborn https://www.expo2025.or.jp/domestic-pv/osaka-pv/)

(インタビュー・執筆:26JJ106小野充輝)